2011年7月13日水曜日

米国で入院期間が短い理由

Aです。

現在ローテーションしている外傷・救急外科では、患者の入退院が頻繁にあります。平均40人ほどの患者数に対して、1日に入院20人、退院20人というのもまれではありません。

現在働いている大学病院の総ベット数は550程度と、日本の大学病院の半分ほどですが、ベット回転率が高いため、実際の入退院数は同程度かむしろ高いと予想されます。

アメリカでの入院期間が短い理由として挙げられるのは、

1)患者が早い退院を希望する。
日本で診療をしていたときには、”退院可能な状態ですよ”と告げると、”あと2、3日、様子を見たい”という患者さんも多かった気がします。さらに、”外出、外泊”というシステムがあり、買い物や食事を病院外でして、また病院へ帰ってくることも退院が近い患者さんではよくありました。アメリカ人に話したら、驚くどころか、理解してもらえませんでした。
これに対して、アメリカでは、退院できますよと伝えると、”Yeah!!”といって喜ぶ患者がほとんど。もっと病院にいたいと訴える患者はほとんど見たことがありません。

これらの違いの理由には、保険制度の違いもあると思われます。入院費が非常に高額なアメリカでは1日入院が延びるだけでも相当な金額になります。

2)転院先の病院、退院後のサポートシステムなどがしっかりしている。
特に外傷患者の場合は、手術後にリハビリや傷の処置が必要なことが多く、日本の場合、入院が長くなる要因となります。これに対してアメリカでは、入院した時点からソーシャルワーカー、ケアコーディネーターがそれぞれの患者につき、保険の有無、自宅でのサポート状況、リハビリの必要性などを主治医チームと綿密に連絡を取り合います。
リハビリが必要ならば、即座に周辺のリハビリ病院と連絡して、受け入れ態勢を確認。そうでなくても自宅でのサポートが無ければ(アメリカでは多くの高齢者が一人または夫婦で住んでいる)、訪問看護、必要な器具の手配をしてくれます。転院先病院や、訪問看護などが日本では不足しているので簡単には移行できないとは思いますが。
ちなみにリハビリの必要性の有無は、認定作業療法士、運動療法士が判断します。

3)多くの治療が外来ベースで可能
日本にいたときには、入院が必要と考えられていた治療も、実は自宅、外来ベースで可能です。抗がん剤治療は、日本でも外来ベースでおこなわれることが多いと思いますが、その他、抗生剤治療や経静脈栄養などの点滴治療も自宅で行われます。定期的な採血も近くの採血センターや病院で行い、結果をファックスで送ってもらいます。手術後のドレーン(胸やお腹の管)も自宅で患者自身が管理し、外来で抜去します。

その他、手術を受ける患者は、手術の朝に入院するとか、多くの手術が日帰り・一泊入院でおこなわれるなどの要因もありますが、いずれもすぐに日本で実現できるものではありません。


最近、中国出身の外科医と話す機会がありましたが、中国では手術2、3日前からの入院が当たり前で、手術後もベット安静が必要以上に長かったり(日本やアメリカでは下肢の静脈血栓を防ぐため、できるだけ早くから患者の離床を促すのが普通)と以前の日本の診療と似ているようです。そのため、大都市の病院はベット数3000などという巨大な病院もまれではないようです。

自分は医療経済の専門家でないので、アメリカの上記システムが国全体としての医療費削減に貢献しているかは不明です。






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