
先日、フェローシップを終えたばかりの若手血管外科アテンディングと
胸腹部大動脈瘤の症例について電話でやり取りしていた時のこと。
前夜から腹痛、嘔吐を訴えていることを報告すると、
”じゃぁ、General surgeryにコンサルトしといてくれる?”
コンサルテーション(専門科に診療の手助けを依頼する)が日常診療において
頻繁に行われる米国の医療に慣れてしまっている自分も
さすがにこの発言には驚きと失望を感じずにはいられませんでした。
米国一般外科専門医資格を持った血管外科医が、
腹痛患者のコンサルトをしなければいけない時代になったのか?
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現在、米国の一般外科レジデントの8割程度が5年間のレジデンシー終了後、さらなる専門分野の修練を行うべく、1−2年間のフェローシップの道へ進みます。
ACGME認定の血管外科、小児外科、外科集中治療、手の外科フェローシップに加えて、大腸直腸外科、腫瘍外科、心臓胸部外科、減量外科、腹腔鏡外科、内分泌外科、移植外科、外傷、熱傷外科などさまざまなフェローシッププログラムがあります。
これらのフェローシップに応募するには、5年間の一般外科を終了する必要があり(外科集中治療や一貫プログラムなどの例外あり)、当然レジデンシー期間中にもこれらの専門外科をローテーションするわけです。
このフェローシップというシステムが、現在の米国一般外科トレーニングを変貌させた要因の一つであると個人的には考えています。
フェローシップをもつプログラムは、大学病院や大規模総合病院であることが多く、当然ながら同じ施設で一般外科レジデントも同時にトレーニングを受けています。
例えば、A総合病院には1年間の大腸直腸外科フェローシップがあり、毎年1名のフェローが勤務しているとします。それと同時に、一般外科チーフレジデント(5年目)もこの大腸直腸外科をローテーションするカリキュラムになっています。大腸直腸外科手術は、”一般外科医として必要な手技”であると考えられています。来週月曜日に、稀な手術があるとします。そのような場合、当然フェローは手術に入りたいわけで、チーフレジデントはこういった症例をほとんど経験できないことになります。そのチーフレジデントも、大腸直腸外科に将来進みたい場合、自分の経験が不十分と考えて、フェローシップに進むわけで、結局その下の学年の経験が同様に少なくなるという悪循環が生まれるわけです。
以前は、一般外科レジデンシーを終了した一般外科医が、日常診療で大腸手術から血管外科までカバーしていたのと比較すると大きな違いです。現在、5年間の一般外科レジデンシーを終了した後にこれら専門外科医として独り立ちするのは、特に技術的な面では難しいと感じます。少し誇張しすぎましたが、この原因はフェローシップの存在というよりも、外科手術の急速な進歩(患者と病気、それぞれの因子における手術適応の拡大や腹腔鏡、ロボット手術など学ばなければいけない手技の増加、など)、社会から要求される診療レベルの変化などの要因の方が大きいと思われます。
フェローの存在が一般外科レジデントの手術経験に与える影響は少ないという
データがありますが、これには賛同できません。どう見積もっても、フェローがいなかったら一般外科レジデントがおこなう手術の数、難易度は上がります。全米の一般外科レジデントを対象とした
アンケート調査の結果でも、大学病院のプログラム、各学年のレジデントの数が多いほど、自分の手術技能に自信がなく、フェローシップに進む必要があると考えるレジデントが多い傾向にあるのは納得できます。フェローシッププログラムの存在は有意な因子とはなっていませんが、この結果についてはいくらでも批判が可能です。
当院の血管外科では2名のフェローに加えて、昨年からは各学年1名の血管外科一貫プログラムのレジデントがいます。従来一般外科5年目のチーフレジデントは血管外科をローテーションしていましたが、来年度以降は、このローテーションもなくなるようです。
次の10年で、General Surgeryという概念もさらに大きく変わることは間違いありません。